POD(プリントオンデマンド)とは?
プリントオンデマンドとは?
プリントオンデマンド(POD)はIT時代の印刷方式として注目度が高まっているデジタル印刷技術である。
これはDTPなどにより作成されたデジタルデータを、製版工程を経ずに直接印刷するもので、従来のオフセット印刷に対して以下のようなアドバンテージがある。
- 小ロット印刷、短納期に有利
- 1枚毎に内容を変えた印刷(バリアブル印刷)が可能
- ひとつのデータから通信機能を利用して複数の出力機を動かす分散印刷が可能
現状での主な用途は、少量生産品用のマニュアル、納期が厳しい新製品カタログ、CRMなどでグループ毎に内容を変えるDM印刷、あるいはチラシの分散印刷などである。
現在、既存の印刷機材メーカーに加え、複写機メーカーなどからもオンデマンド印刷機が発売されており、将来性のあるマーケットとして競合が激化している。
2000年5月にドイツのデュッセルドルフで開催された世界最大の印刷関連コンベンションDRUPAにおいてもオンデマンド機の台頭が強く印象づけられた。我が国においても印刷業に加えて一般企業や広告代理店などで導入、利用が始まっている。今後、より高機能かつ安価で使いやすい第2世代オンデマンド機の開発、インターネットの商業利用の加速、顧客企業のマーケティング手法の変化にともなう小ロット印刷需要の増加、などの要因により市場が急速に拡大すると予測されている。
グーテンベルク以来の革命
プリントオンデマンド(POD)は、プリプレス工程のデジタル化、DTP利用の拡大、CTPシステムの導入と順を追って進化してきた印刷工程のデジタル化の完結編であり、データ入力から最終印刷工程まで一貫したデジタル処理を行うものである。これはたとえば高速道路(印刷のデジタル化)が全線開通して他の高速道路(インターネット)と接続した時のように、劇的な変化を印刷ビジネスにもたらすことが予想される。
プリントオンデマンドによる変化は単なる印刷機材や技術の変革にはとどまらず、むしろ同じデジタル情報処理技術をベースとした高度情報通信時代、ネットワークビジネス時代に対応する印刷業界の業態変革こそが主体であり、機材や技術はそのためのソリューションとして提供されるにすぎないとも言える。すなわち、ハードウェアの進化ではなくワークフローの改革こそが重要なのである。
これは印刷業界が過去において経験したことのない大規模な変革の必要性を意味している。プリントオンデマンドを含めた印刷工程のデジタル化)がグーテンベルク以来の印刷革命と言われるのはそのためである。高価かつ耐用年数の長い設備、膨大な工数と熟練した技術者、長い間印刷業界ではこの二つの要素を所有することが即ビジネスを成立させてきた。オンデマンドプリンティングはその構造を一変させてしまう力を持っている。設備は容易に所有できるものとなり、習熟を必要とする技術は不必要になるからだ。
日本の印刷業界におけるプリントオンデマンド
プリントオンデマンドは欧米では既に商業印刷需要の15-20%の市場規模を持っている。インフォトレンズ社の最新の調査によると、我が国でも1999年から2001年にかけて毎年年率40%以上の高成長を遂げており、2006年には3500億円市場へと成長、プリント産業全体におけるオンデマンド印刷のシェアが10%弱に達する見込みである。さらに将来的には印刷の主流となることに間違いはない。したがって、印刷業界にとって、来るべきプリントオンデマンド時代にどう対応してゆくかは生き残りをかけた重大な問題である。
しかし、残念ながら我が国の業界の取り組みは未だ充分とは言えない。これは長引く景気の低迷に起因する投資意欲の低さに加え、我が国の印刷業界が品質・サービスの両面において、欧米と比較してより高く完成された印刷ビジネスを築いてきたことが逆にネックとなっているためと考えられる。欧米では初期的なオンデマンド化のメリットとして歓迎された小ロット短納期への対応は、我が国では印刷営業担当者の「人間オンデマンド」ともいうべき献身的な努力により既に実現されていた。さらに一周遅れといわれる我が国の産業界全体でのIT化が進んでいなかったことにより、顧客企業からの本格的なオンデマンド需要が顕在化してこなかったためでもある。
しかし、今後急速に産業界のIT化が進行していったときに対応が遅れては命取りにもなりかねないのである。
印刷業界は、特に首都圏においては主要中小企業ビジネスとして多くの従事者を抱えている。 その大多数を占める中小規模の印刷業者の間での取り組みの遅れは深刻である。今日明日はしのげても明後日はない、というのが現状と考えられるからだ。小規模の業者はオンデマンド時代に単独で対応するには相当の企業努力が必要とされ、何らかの形でのビジネスアライアンスを確立していかなければ生き残りは難しいと考えられる。
激化する競合 ― 新たなコンペティターと新たなルール
プリントオンデマンドは比較的安価な設備投資と熟練を必要としない(スキルレス)運用が可能であるという、その技術的な特質によって既存印刷業界外からの印刷サービス業参入をも容易なものとする。さらに国内の印刷物マーケットは、我が国の経済の安定とともに外国資本の投資対象としてもターゲットとなる条件が整ってきている。したがって既存の印刷業者にとっては、どこからコンペティターが現れるか分からない戦国時代さながらの状況となる。プリントオンデマンドは大きなビジネスチャンスであると同時に、生き残りをかけた熾烈な競合が避けられない激戦場なのだ。
日本では、その島国根性的メンタリティー故か未だに情報を抱え込むことを競合優位戦略としている企業が少なくない。しかしそれではこれからの高度情報通信時代には適応できない。これからは積極的に情報を共有し、独自のアイデアを持ち、環境の変化にスピーディーに対応する企業が強者となると言われている。オンデマンドプリンティング時代には印刷業も例外ではなくなり、いわゆるヒト、モノ、カネの経営資本競争からアイデア、スピード、実行力の勝負という新ルールへと移行せざるを得ない。すなわち、ビジネスのスピードに付いていけない企業が淘汰され、勝ち負けが明確になる「オンデマンドディバイド」が加速すると思われる。
事実、今後5年間に既存印刷業の4割が淘汰されるとの予測もなされている。生き残りのための前提条件として、まず正確な情報にもとづいて業界のビジネス環境を認識することが急務である。全産業が情報化するといわれるIT革命においては、印刷業もまた例外たりえない。それは各印刷業者の情報化を前提条件としたサービス産業化と言う方が理解しやすいかもしれない。欧米の先例からすると、さらに顧客企業の営業課題を解決するソリューション提案型のサービスを提供し、ビジネスパートナーとなっていくことができなければ激化する競合を勝ち抜くことは難しい。
最後に
オンデマンドプリンティング推進委員会は、こうした業界の現状を踏まえ、まずプリントバイヤー(印刷物利用者)、プリントプロバイダー(印刷物提供者)、ベンダー(印刷機材提供者)が一同に会し、自由な発想のもとに人材の交流を深め、それぞれの持つ情報を交換する場を提供してゆくことが必要であると考え、オンデマンドショーを開催している。また、目まぐるしく変化するビジネス環境を継続的にフォローし、適切なオンデマンドソリューションを実現してゆくためのツールとして、ウェブサイトを中心としたプロジェクトodpjapan.comを企画している。欧米の現状とはまた違った形での我が国独自の新しい印刷文化として、プリントオンデマンドの発展に寄与することが我々の使命と考えている。